
私は、今年2026年6月に縁がありこの水道橋の地に、「すいどうばし絵画療法研究所」を開設しました。友だちに助けられながらホームページもようやくできあがり、私の絵画療法や心理療法の経験について何かお話ししようと思いながら時間がたってしまいました。私が芸術療法に出会って40年以上が過ぎます。まずはじめに、私が芸術療法に出会ったきっかけから話しをはじめたいと思います。
その当時、私は神奈川県中央児童相談所の心理職をはじめたばかりでした。そのころ心理職の仲間の中で、小田原児童相談所の心理職が心理療法をはじめたといううわさが大きな話題となっていました。当時の小田原児童相談所は、早稲田大学出身で全学連の委員長をやられた加藤寬忠さんや故・小川捷之先生の弟子で遊戯療法の達人の諏訪部政好さんなど優れたセラピストのいる児童相談所でした。メラニー・クラインやウィニコット、ユングなどの翻訳書はなく、臨床心理学の専門書が本屋には数えるほどしかありませんでした。また、精神病院や精神科クリニックに心理職を配置しているところがとても少ない時代でした。
ちょうどそのころ、神奈川県立こども医療センターの精神療法研究会が心理療法の講演会を企画しました。講師に河合隼雄先生と山中康裕先生を迎えての講演会で非会員でも専門職にオープンにしてくれました。今にして思えば、ずいぶんと贅沢な講演会でした。
講演は、河合隼雄先生が夢分析の話しを通して、心理療法の基本に関する講演をされました。河合先生の話のおもしろさについ引き込まれたのを昨日のことのように覚えています。河合先生は、不登校の事例の話しから、羊などの動物を前に進ませるため前から引っ張ったのではあとずさりしてしまう、羊だけでなくどの動物でもうしろからついて行くことが必用だという話しをされました。そのことは、心理療法においても同様で、クライエントを無理矢理変化させようとすればするほど逆効果となり、治療者はクライエントのうしろからゆったりとついて行く心がまえが良いのではないか、という話しをされました。
山中康裕先生の講演で、はじめて相互なぐりがき法というものを知りました。要するにスクィグルですね。普通はでたらめだと思われる「らくがき」の描線を媒体にして、その描線から相互に何かを見つけるという相互関与的な関わりが心理療法を促進することに、当時の私は衝撃を受けました。また、箱庭療法をはじめて知ったのもこの講演でした。講演終了後に、箱庭療法や相互なぐりがき法を学べるところは何処かという質問をしたら、山中先生が日本芸術療法学会というものがあり、そこで学べることを丁寧に教えてくださいました。その講演会のあと、日本国中の精神病院や相談機関がそうであったように、神奈川県の児童相談所でも手作りで箱庭療法の道具作りをやりました。箱は自作で作り、砂は江ノ島の砂でした。
これが私の芸術療法のことはじめです。心理療法家になりたてで若輩であった私にとって、心理療法の基本的知見をまず芸術療法から授かったということが、その後、心理療法を行うための大きな支えとなりました。今回は私の芸術療法ことはじめについて話しましたが、これから少しずつ絵画療法の基本や技法に関することなどについて述べていきたいと思います。
